第38回・岡山県市議会議員研修会


2006.08.17

岡山プラザホテル









 「地方財政改革の行方〜自治体の将来像を考える」という演題で、講師の澤井先生が準備されていたレジュメを下記に掲載しました。



第38回 岡山県市議会議員研修会
 

 「地方財政改革の行方〜自治体の将来像を考える

            奈良女子大学名誉教授   澤井 勝 氏


1.06年度予算をめぐって

(1)06年度予算は緊縮予算
(2)建設事業縮小と地域格差の拡大
(3)労働市場の二重構造化
(4)所得格差の拡大
(5)06年度末の政府債務残高は775兆円の見込み
(6)負担増への転換
(7)公務員数の削減
(8)分権改革と三位一体改革の推進
(9)市町村合併の進行と財政
(10)医療制度改革と府県、市町村


2.5年連続して縮小した地方財政計画の規模

(1)2006年度の地方財政規模は83兆1800億円程度、前年度より5900億円(0.7%)の減
(2)地方財源の通常収支不足額の圧縮とその補填
(3)地方交付税は15兆9073億円程度で、前年度から9900億円(5.9%)の減
(4)三位一体改革
(5)地方税制の改革
(6)地方債の許可制から協議制への移行(06年度から)
(7)団塊世代の定年退職


3.地方自治体のこれからの展望

(1)新型交付税の一部導入と地方交付税の削減
(2)本格的な消費税税率引き上げ議論
(3)交付税総額の抑制


これからの地方自治体の考えるべき課題

前提1.地方財源は伸びない、または縮小
前提2.リスクの拡大に対応するための公共的サービスは拡大
前提3.今ある資源を活用する
       (学校・公民館・福祉施設・市民会館・農協の跡地・郵便局の跡地・耕作放棄地・森と川と湖)
     今ある人材を活かす
       (医師や保健士・退職公務員やサラリーマン・職人と農業のスキル)
前提4.民間の資金を掘り起こす


方向性1.

(1)行政と住民が協働して公共サービスを担う
(2)人の能力育成(塾や市民大学)、拠点やつどう場の形成
(3)地域ファンド(市民と市民である企業の寄付を基礎とした)の形成
(4)行政は住民の新しい動きや芽をつぶさない
(5)住民は、行政への安易な依存やお願い、過大な期待をやめることが大事
(6)地域での「小さな公」の形成、下請けではない本物の「協働」、「市民的公共性」の形成への努力


方向性2.

(1)「行政組織」の解体的再編と活性化、組織のフラット化、組織管理業務のスクラップ
(2)事務事業評価と政策評価を進めて、現行事業の4割を整理し、2割の新規事業をはめこむ


新規事業とは

(1)地域就労支援事業
(2)家族支援事業
(3)在宅医療と在宅ホスピスができるような拠点施設の設置
(4)地域経済活性化のひとづくり・・・滋賀県長浜市の「黒壁」、新潟県黒川村の本物の職員派遣事業
(5)地球環境を守る地域循環型生産・・・山形県長井市などのレインボープラン
(6)ふるさとを捨てない学校教育
(7)県による合併しない、できない町村の取り組みを支援
(8)住民によるまちの経営、NPOなどによる「まちづくり協議会」などへの支援
(9)広域連携、国保の再保険、医療の確保、遠隔医療システムと在宅医療の可能性
(10)職員の能力アップと予算なき行政
(11)Uターンと山村留学、産業体験
(12)地産池消、食生活と地域NST
(13)特産物の開発とマーケットでの働き甲斐
(14)災害に強い地区づくり
(15)イベントと祭りの地域活性化
(16)役場の人が変わる


終わりに

(1)生まれるときは受身だが、「死ぬ場所」くらいは選択できるようにしたい
(2)二足のわらじをはく公務員を大事に
(3)法律は守るものではなく、活用するもの、つくるもの