第68回・全国都市問題会議 2006.07.19〜21 主催 全国市長会・(財)東京市政調査会・(財)日本都市センター・札幌市 協賛 (財)全国市長会館 「都市の連携と交流−まちのちからの活用」 札幌コンベンションセンター |
この度、笠岡市議会より9名で第68回・全国都市問題会議へ登録した。 今年は札幌市で開催という事で、個人視察7万円の範囲内ギリギリで何とかしなければならない。 当然、正規運賃で2泊3日の行程は無理で、激安パックツアーを利用して、笠岡から札幌の往復運賃とホテル代を個人視察の範囲内で何とかおさめた。。 だから交通費と宿泊費以外の費用、大会の登録費や夕食、札幌での移動は全て個人負担となった。 札幌コンベンションホールで、7月20日(木)が9:30〜17:00、21日(金)が9:30から12:00まで、そして13:00から行政視察という予定。 但し21日(金)は14:45新千歳空港発のため、午後からの行政視察は断念しなければならず、致し方なく19日(水)に新千歳空港へ14:00に到着後、行政視察のCコース・モエレ沼公園見学コースへ独自に行くことにした。 |
モエレ沼公園・全景 |
ガラスのピラミッド「HIDAMARI」 |
モエレ沼公園は、札幌の市街地を公園や緑地の帯で包み込もうという「環状グリーンベルト構想」における北部平地系緑地の拠点公園として計画された。 内陸部分約100haの周りを取り囲むモエレ沼の水面を合わせた189haを公園区域としており、平成17年夏に全面完成した。 札幌市の公園の中では数少ない水の要素を持つ公園であり、広大な面積を有するスケール感からいっても、札幌を代表する公園のひとつである。 彫刻家イサム・ノグチのマスタープランに基づき、「全体をひとつの彫刻」とみなした公園づくりを行なっており、世界的にも注目を集めている。 ガラスのピラミット「愛称・HIDAMARI」は、イサム・ノグチが「全体をひとつの彫刻」として設計したモエレ沼公園のシンボルとなる建物で、透明な面の集合体として、軽快な見え方を追求したデザインである。 館内には休憩所となるアトリウム、イサム・ノグチやギャラリーや文化活動のためのスペース、レストラン、ショップなどのサービス施設、管理事務所等があり、モエレ沼公園の利用と運営の拠点となる複合施設である。 |
札幌コンベンションセンター |
登録受付 |
第1日目 9:30 開会式 開会挨拶 全国市長会会長・金沢市長・山出保氏 開催市市長挨拶 札幌市長・上田文雄氏 来賓挨拶 北海道副知事 9:50 基調報告 国際日本文化研究センター教授 川 勝 平 太 氏 まちの「ちから」は景観から ・・・都市(アーバン)化から農芸(ルーラル)化・・・ 日本列島改造論を再考してみると、東京から北九州にいたる太平洋ベルト地帯における都市化と、三大都市圏における「一日交通圏」「一日経済圏」の実現であり、他の地域では過疎化が進行した。都市化を地方都市の住人が求めた結果、地方の主要都市はミニ東京となり、その周囲はどこでも過疎化が進行した。 これからは「都市の農村化」を進める必要がある。 都市での生活に植木鉢・花壇・公園・家庭菜園・市民菜園・水辺・林・森を増やしていくという事である。 水・緑・土への志向が「農村化」である。 1998年に第5次国土計画「21世紀の国土のグランドデザイン」が策定されたが、その骨子は「歴史と風土の特性に根ざした新しい文化と生活様式をもつ人々が住む多様性に富んだ美しい国土、庭園の島(ガーデンアイランズ)ともいうべき世界に誇りうる日本列島を現出させる提示である。 「庭園の島=日本」を創造するのに、4つの戦略(多自然居住空間の創造・都市の刷新・地域連携軸の形成・広域国際交流圏の形成)が打ち出された。 市町村合併が一段落すれば、都道府県合併が行われ、道州制が議論されてくる。 西日本を「海の洲」、関東地方を「野の洲」、中部地方を「山の洲」、北海道・東北は「森の洲」として考えてみたらどうだろうか。 西日本のGDPは、イギリスやフランスに匹敵する。州都を決めるのは大変難しいので、瀬戸内海に浮かぶ大型浮体構造物(メガフロート)はどうだろうかという提言である。 全国から2600名以上の市議会議員・市執行部の前で、まさに瀬戸内ど真ん中の笠岡市沖の瀬戸内海の離島周辺が候補地といわれたような気持ちになり、何だか「元気」を頂戴したような感じである。 関東のGDPも、イギリスやフランスに匹敵する。州都は東京か、さいたま市が候補地と思われる。 中部地方のGDPは、カナダに匹敵する。州都は東濃(多治見・土岐・瑞浪)が有力候補である。 北海道・東北地方のGDPもカナダに匹敵する。州都は新千歳空港と札幌とから等距離にある森の豊かな地がふさわしいと考える。 そして新首都は、那須・阿武隈が第一候補、東濃が第二候補で、「鎮守の森の都」と考える。 高度成長期の「日本列島改造論」は都市化による経済力至上主義に立った「力の文明」論であった。 これからの成熟経済期には「農芸化」による「ガーデン・アイランズ=日本」への改造が奔流となるであろう。 |
11:00 主報告 札幌市長 上 田 文 雄 氏 「2人の偉大なアーティストの遺産」 ・・・・・モエレ沼公園・・・PMF・・・・・・ 1869年(明治2年)、混乱の続く明治政府の中に北海道開拓使が設置された。その開拓使の本府設置場所として選ばれたのが現在の札幌市である。 昭和10年の人口が19万6000人だったのが、約70年間で約10倍の188万人を超えた。 昭和47年のアジアで初めての冬季オリンピック大会の開催と、その年の政令指定都市に移行が飛躍的な発展の原動力となった。 札幌市においては、創建当初から都市計画に基づいた街づくりを推進してきた。また天与の条件として平地部の可住地が大きく清らかで豊富な水に恵まれた。そしてオリンピックを契機とした急速かつ先進的な都市計画基盤の投資を行った。そして消費都市・行政中心都市として発展してきたため比較的工業地域が少なかったことから深刻な都市問題を抱えずに発展できた。 札幌市の成長の中で2人の偉大なアーティストの遺産がある。 モエレ沼公園 豊平川の旧河川が残した三日月湖の水面を含む約189haの公園である。 20世紀の空間芸術に画期的な足跡を残した、イサム・ノグチの「公園全体を一つの彫刻としてみなす」というコンセプトに基づき、札幌市が17年間にわたって造成を進め、平成17年7月に最後の造形物となった「海の噴水」が完成した。 イサム・ノグチが初めてこの地に訪れたのは昭和63年3月で、モエレ沼は、稼動中の不燃ゴミの埋立地であった。当時83歳のイサム・ノグチはこの地を大変魅了し、自らの芸術活動の集大成として全力を挙げて計画を練り上げて生涯を閉じた。 北の大地と一体化した圧倒的な造形は札幌市として誇れる公園である。 レナード・バーンスタイン〜パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF) 札幌市においてもう一人誇れる遺産は、20世紀を代表する指揮者・作曲家・教育者であるレナード・バーンスタインが創立したPMFである。 PMFは、毎年7月から8月にかけて約1ケ月間、札幌コンサートホール「キタラ」や「札幌芸術の森」などをメイン会場として演奏会やセミナーなど多彩な事業を展開する国際教育音楽祭である。 今年17回目を迎えるPMFは、世界中から厳しいオーディションを経て集まるアカデミー生(約120名)や、ウィーンフィル、ベルリンフィルを主とする世界トップクラスのオーケストラなどから招いている教授陣の中に引き継がれている。 さわやかな夏空の下で繰り広げられる若き音楽家達による情熱と感動にあふれたステージは札幌市の文化と誇りあふれる街づくりの牽引車である。 |
13:00 PMF札幌コンベンションセンター・コンサート |
13:40 特別講演 建築家 安 藤 忠 雄 氏 市民参加のまちづくり まちづくりは、そこに住む人々が積極的に参加してこそ意義がある。その街で生活し、その街を愛する住民達の思いがなければうまくいかない。 表参道ヒルズの建て替え計画で改めてその事実を感じた。 同潤会アパートメントは、関東大震災の後、1927年に人々が集まって、安全で安心に暮らせる集合住宅の試みとして建設された。 アパートのつくりだす街並みの風景は、貴重な「都市の記憶」であり、人々の心に深く刻み込まれている。再建計画に当たったは、半世紀近く受け継がれてきた「心の風景」をどのような形で残していくかが主題となった。 同潤会アパートの建て替えには、商業スペースに押し潰されがちな住宅スペースの確保を念頭に置いた。一方で、この貴重な都市遺産をいかにして残していくかを考え、建物の高さをケヤキの並木と同程度に限りなく低く抑えることにこだわった。その上で、敷地南東端、表参道交差点寄りの一棟を、そのままの形で復元することとし、新しい建物が周囲の景観だけでなく、人々の心象風景とも一体となって連続していくよう細心の注意を払った。 日本人は恵まれた自然環境を活かし、自然を楽しむ感性に長けた民族であり、文化もまた自然を頼りに育まれてきた。その感性を呼び覚まし、市民の力によって理想の風景へ、現在の庭園づくりを進め、新しい形のまちづくりを発信できればと思っている。 現在、春の大阪の象徴とも言える造幣局の桜の通り抜けと併せて、新たな桜の通り抜けを市民自身の手でつくっていこうという運動を進めている。(桜の会・平成の通り抜け) 美しい日本の創造を目指して今後も活動を続けていくつもりだ。 この話を聞いている我々に対しても行動をおこさなければならないと力説された。 テンポとパワーあるあっという間の1時間だった。 |
15:00 一般報告 新潟市長 篠 田 昭 氏 食と花で開かれる「政令市・新潟」の扉 平成17年度には、近隣13市町村との合併により、人口が50万人から81万人になった。 平成19年4月には本州日本海側初の政令指定都市移行に向けて準備を進めている。 目指す政令指定都市は以下の姿である。 1 世界と共に育つ日本海政令市・・・太平洋側に偏っていた日本の在り方を見直し、急速に成長する東アジアと向き合う政令市 2 大地と共に育つ田園型政令市・・・農業の持つ力や多面的機能を活かして、田園のゆったり感と高次都市機能が共存する新しいタイプの政令市 3 地域と共に育つ分権型政令市・・・大都市では失われつつあるコミュニティの力や地域のまとまりのある政令市 新潟市は農業算出額、水田面積は全国の市町村でトップである。また食料自給率は全国平均の40%を大きく上回る67%である。 チューリップ・ボケ・アザレアなどの花木類の出荷率も全国一であり、そうした中、食と花で世界に貢献することを使命と考え、「食と花の世界フォーラム」を平成19年から開催し、食糧危機や食の安心・安全などをテーマにシンポジウムや国際見本市を開催していく。 |
16:00 一般報告 旭川市旭山動物園園長 小 菅 正 夫 氏 旭山動物園の改革 旭川市旭山動物園は、昭和42年に開園し、昭和58年には59万人という過去の入園者となったが、その後大型遊具施設を導入したりしたが、入園者が年々減少し、平成8年には入園者が過去最低の26万人となった。 なぜ動物園に来ないのか、いろいろ整理してみた。動物園が面白くない。何が面白くないのか。それは動物が動かないし、いつも同じであるからだった。 そこで理想の動物園を夢見ながらも職員の手作りでできることからやっていこうと試行錯誤した。 まず動物が幸せに暮らせる動物展示、飼育係りの意識改革、行動展示と能力展示、そして環境エンリッチメントの手法を取り入れた。 動物が幸せに暮らす動物園を目指し、平成9年に「こども牧場」「ととりの村」、平成10年に「もうじゅう館」、平成11年に「さる山」・冬季開園、平成12年に「ペンギン館」・平成13年に「オランウータン空中散歩塔」、平成14年に「ホッキョクグマ館」、平成16年に「あざらし館」、平成17年に「くもざる・かぴばら館」等を次々にオープンし、平成17年には、200万人を突破した。 感動を与える展示を通して、多くの方々が、野生動物を守り、自然環境を損なわない暮らしをし、世界の環境保全活動を支援する事を願っている。 |
安藤忠雄氏の特別講演 |
旭川市旭山動物園園長 小菅正夫氏の一般報告 |
パネルディスカション 第2日目スケジュール 9:30 パネルディスカッション ・・・テーマ・・・ 都市の連携と交流・・・まちのちからの活用 ・・・コーディネーター・・・ 学習院女子大学特別専任教授 平野次郎 氏 ・・・パネリスト・・ 常磐大学教授 井上 繁 氏 早稲田商店会会長 安井潤一郎氏 北海道大学大学院工学研究科教授 小林英嗣 氏 潟iムコ・チームナンジャ・ディビジョン スイートフード・テーマパーク・プロデューサー 斎藤未来 氏 新宿区長 中山弘子 氏 富山市長 森 雅志 氏 12:00 閉会式 次期開催市市長挨拶 静岡市長 小嶋善吉氏 閉会挨拶 財団法人東京市政調査会 西尾勝氏 12:10 (昼食) 13:00 行政視察 A・B・C・Dの4コース A 大倉山ジャンプ競技場とウインタースポーツミュージアム B 札幌芸術の森野外美術館 C モエレ沼公園 D アサヒビール園札幌工場見学・羊ケ丘展望台 会場内 |
富山市のコンパクトなまちづくり 富山市長・森雅志 氏 平成17年4月に富山地域7市町村が合併し、人口約42万人の「新富山市」が誕生した。 富山市は人口密度の低い薄く拡がった市街地が形成されており、自動車の保有率が全国でもトップクラスである。 自動車に過度に依存すると、自動車を運転できない高齢者等にとって移動の自由が制約される懸念がある。 このような課題に対応するため、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトな街づくりに取り組んでいる。 平成18年4月29日に、公共交通の活性化によるコンパクトな街づくりのリーディングプロジェクトとして、次世代型路面電車・富山ライトレールを開業させた。 歩きたくなるまち 新宿 東京都新宿区長 中山弘子氏 歌舞伎町は危険を感じるまちとして、マイナスのイメージがある。このマイナスのイメージをゼロにして更に「大人の文化を楽しめるまち」にするため、国の地域再生計画などを活用した取り組みを始めている。 「歌舞伎町ルネッサンス推進協議会」を設置して、安心・安全を推進するクリーン作戦プロジェクト、文化的な賑わいを創造する地域活性化プロジェクトを立ち上げている。 また玉川上水復元の検討や緑の冷気を新宿のまちにつなげるプロジェクトも始動している。 歩道に木陰をつくる豊かな街路樹を「街路樹運動」、大久保のつつじの里帰りの取り組みも行っている。 「生命基盤としての美しい国づくり」による交流戦略 北海道大学大学院工学研究科教授 小林英嗣氏 アイルランドでは、1958年より約50年続いているタイデイタウン運動を行っている。これは街をきれいにしよう、きちんとした街にしようという運動である。 当初は観光客誘致を目的とした「ゴミの片付け運動」だったが、1980年代半ばから、風景・景観、国民の精神と文化、環境の保護と循環、生活質の固有性、農村の多様性や新産業育成へと内容を拡大した。 フードテーマパーク時代の到来 〜ナムコ・チームナンジャの事業戦略 潟iムコ・チームナンジャ・ディビジョン スイートフード・テーマパーク・プロデューサー 斎藤未来 氏 数多くのフードテーマパークのキャスティングディレクターを務めてきたが、「スーパーパティシエ」を一堂に集結した「自由が丘スイーツフォレスト」は、パティシエという存在を社会現象にするとともに、自由が丘を人気タウンに塗り替えるなど大きな影響をもたらした。 安心・安全はまちのうりもの 早稲田商店会会長 安井潤一郎氏 1996年に環境を切り口とした商店街活動に取り組み、商店街の夏枯れ対策「エコサマーフェスティバルイン早稲田」開催した。また早稲田大学の7つの商店会によるユニークなごみゼロ実験に取り組み、「ごみ減量リサイクル」が「まちづくり」へと進化する奇想天外な「まち場」の活動を展開している。 都市の連携と交流の現代的意義と新展開 常磐大学教授 井上 繁氏 これからの都市連携にあたっては、これらのハードをどう生かすかが重要である。その生かし方の知恵を磨き合うようなソフト中心のものが望ましい。 条件の似通った都市や、何かのきっかけで連携した都市同士が互いの技術や経験を交流することによって新たな発想や試みが生まれる。 |