情報教育視察


2003.06.14

笠岡市立新吉中学校

「笠岡地区ネットディ実践研修講座」



2003.07.17


笠岡市立中央小学校
 

「ディジタルコンテンツ活用授業」





新吉中学校

笠岡地区ネットディ実践研修講座

2003.06.14



 6月14日(土)、井原市議会の上田議員に誘われて、新吉中学校の「ネットディ」という手作りのLAN敷設工事をしている様子を見学に行った。
 上田議員は岡山県情報教育センター指導主事の土肥直樹氏と以前から親交があるという。
 当日は、土肥直樹氏から様々な説明を伺うことができた事を御礼申し上げたい。

 「ネットディ」とは、教員とボランティアのPTA・地区住人で手作りで校内のLAN敷設工事を行うという事業である。
 当日は、25名の教諭と8名のPTA、9名のボランティア、3名の岡山県情報教育センター職員と笠岡市教育委員会の1名の職員で総勢46名で作業を行なっていた。
 25名の教諭のうち新吉中学校の教諭は9名で、あと16名は市内の各小中学校の教諭である。
 他校の教諭がこうした実践研修を行うことによって、自分の学校のLAN整備に役立つわけである。



職員室のLAN敷設工事

教員とボランティア・スタッフが
手際よく工事を行なっている。



2階のパソコン教室から
1階の職員室・3階の普通教室へ
ケープルを敷設していた。
 
 学校のLANの場合、教員のLANと生徒のLANを別回線で敷設するという特殊な環境が必要である。
 ちなみに新吉中学校の工事に必要な部材はLANケーブルやモジュラープラグ、HUB(5)等で約13万円。
 業者に発注するとかなりの費用になるわけだが、こうして手作りで安価に校内LANを構築しているわけである。

 たまたま私の長女を以前担任していた高橋教諭と出会った。現在中央小学校の4年生の担任という事で情報教育に熱心に取り組んでいる方である。
 その後、高橋教諭のホームページのBBSで、やり取りを行なっている中、今回の教育現場の視察について無理を承知でお願いしたわけである。
  





2003.07.17

中央小学校

ディジタルコンテンツ活用授業





普通教室でプロジェクターを使用して、
この授業の概要を説明。

 
 中央小学校のパソコン教室は20台のパソコンが狭いスペースに並んでいるのでワークスペースがない。
 という事で最初は普通教室で授業の概要をプロジェクターを利用して説明。
 そしてパソコン教室に移動を行ってパソコンで答えを導く。
 再度、普通教室に戻って答えを整理するという変則的な授業であった。

 単元名は「地図に親しもう」という小学4年生の社会科の授業である。
 各地の地形を紹介するディジタルコンテンツを4点見ながら、その場所に該当する地図はどれかということをクイズ形式で考えたり、地形の特徴が地図上でどのように表せているかを話し合ったりして、地図に慣れ親しむことを目標とした授業である。

 
 
 パソコン教室に移動を行なって、パソコンを使用しての答えの導き方について説明を聞く。
 そしていよいよパソコンの起動。
 現在笠岡市の小学校は2人に1台のパソコンという事で共同作業となる。(中学校は1人に1台)


情報教育の目標

 *見た事や読んだ事を整理して話す。
 *得た情報から新たな課題を見つける。
 *集めた情報について話し合い、新しい関係を見つける。
 *相手に伝えるために、絵図や資料を見せながら話す。
 

パソコン教室へ移動して
答えの導き方について説明

4つの動画を順番に開いて観察
パソコンの使い方も手慣れている

 まずは4点のディジタルコンテンツを開く。
 映像はコンピューター教育活用センター(CEC)
の教育用画像素材集を利用している。

 岩手県の陸中海岸・沖縄県竹富島のコンドイビーチ・北海道の富良野・静岡県の富士山の4点である。
 これら4つの動画(1つが約20秒)をまず観察する。

 どの動画とどの地図が同じかを、また理由を用意されたワークシートに記入していく。

その課題を児童たちが2人1組になってパソコンを稼動して、ワークシートに答えを記入していく。
 答えと同時に、答えを導いた理由を記載する。
 
 
右のワークシートの@ABCの写真は、動画の1コマである。
 ア・イ・ウ・エは、@ABCの地図てある。

 @・・・岩手県の陸中海岸
 A・・・沖縄県竹富島のコンドイビーチ
 B・・・北海道の富良野
 C・・・静岡県の富士山

答え
 ア・・・北海道の富良野
 イ・・・静岡県の富士山
 ウ・・・岩手県の陸中海岸
 エ・・・沖縄県竹富島のコンドイビーチ

 この結びつきを答えるわけだが、今回の学習の「目のつけどころ」は、「等高線」である。
 右の写真ではわかりにくいが、この「等高線」を理解する事によって、答えを導いていく。
 
 アは「等高線」が地図の右下部分にはあるが中央部分にはない。中央部分は区画整理した畑を連想できる。
 イは、多くの「等高線」があり高い山が理解できる。
 ウは、右側の海岸に「等高線」が密集している。つまり急な断崖が理解できる。
 エは、等高線が極めて少ない島である。


ワークシート


普通教室に戻って、答えと理由の発表
活発な発表が続く。


普通教室のプロジェクタは、高橋教諭の私物
教育予算もなかなか厳しいのが実情

8月24日には中央小学校でも
「ネットディ」の予定と伺った。
教育予算が厳しいなかで
手作りのLAN整備が進む。


 パソコンにより答えを導いた後、再び普通教室に移動して、答えと理由を発表する。
 動画と地図を結びつけた答えは、概ね理解していた。また理由までも的確に答える児童もいた。
 発表後、ワークシートに「今日の学習でわかったこと・思ったこと」をそれぞれが記入して提出。あっという間に授業終了。


 短時間に盛り沢山の凝縮した授業で、とても居眠りをするような余裕もない。
 児童も興味を抱きながら、真剣にパソコンをつついて答えを導いている。

 4年生の4時間目の授業を視察したわけだが、お昼前の大変暑い時間帯だった。
 普通教室からパソコン教室に移動し、20台のパソコンが一斉に稼動すれば温度は急上昇。
 1人の児童が気分を悪くしてパソコン教室をでて休養するというアクシデントもあった。
 パソコン本体も暑さが原因かどうか因果関係の実証はできないが、WindowsXPであってもフリーズが多いという。また突然データが消える事もあるという。
 この暑さならいろいろなトラブルもあってもおかしくないだろう。
 パソコン教室の利用は、80%以上だという。
毎日暑い中のパソコンの酷使は、大きな課題である。パソコン教室のエアコン設置は急務だと感じた。

 以上のように、高橋教諭に無理をお願いして視察した今回のデジタルコンテンツ活用授業は大変インパクトがあった。

 最後に中央小学校・大塚校長と高橋教諭の配慮に心から御礼を申し上げたい。



 2003.07.20に報告書をUPして、翌日には私の掲示板にも、また高橋教諭の掲示板にも、高橋教諭のご意見を書き込み戴いた。丁重なる書き込みで、恐縮している。
 私自身、情報教育の実態を今まで正しく理解できてなく恥ずかしい限りである。

「情報教育」は「情報そのものの取り扱い方を学ぶ教育」
という新たな認識ができた事に心から感謝申し上げたい。

 危機的な財政状況の中で、理想の情報教育の環境整備は道のりが険しいのが現実である。
 ただ現場の教諭の意見に耳を傾けながらの柔軟な判断が必要という認識を深めた。
 少しでも情報教育の環境整備が整うべく、いろいろな提言を考えてみたい。
 まずはパソコン教室の計画的なエアコン整備が急務と考える。




2003.07.21
高橋教諭から私の掲示板への書き込み


角田様
 視察のまとめ,拝見させていただきました。
 お忙しい中での迅速な御対応,敬服いたします。

 私のWebページにも長文でレスをさせていただいたので,
 こっちには内容の違う書き込みをさせていただきます。

 「コンピュータを使わない情報教育もある」ということ,お分かりいただけたでしょうか?
 角田様も視察レポートの中で書いてくださっている「情報教育の目標」の文言を見れば
 一目瞭然かと思います。
 情報教育の目標には「コンピュータを使って・・・・」「キーボードの・・・・」「ウィンドウズの・・・・」
 等というコンピュータ操作そのものを目標に置いたような文言はほとんどありません。
 今の時代,たまたまコンピュータやインターネットなのです。
 5年もすれば,コンピュータのインターフェースも大きく変わるでしょう。
 情報通信ネットワークは存在するでしょうが,
 すでにインターネットではないものが主流になっているかも知れません。
 人間に必要な「情報活用能力」は「流行」ではなく「不易」であるべきです。
 だから機器の操作技能習得に目標を置いているのは,「情報処理教育」系のカリキュラムの中にいる学生だけです。
 およそ小学校教育とはかけ離れた領域となります。
 「情報教育」は「情報そのものの取り扱い方を学ぶ教育」なのです。

 実はそこの部分に対する誤解が根強いのです。教員の間でも。
 もし参考になればと思い,あるサイトを紹介します。
 永野和男先生@聖心女子大が主宰する「火曜の会」のホームページです。
 http://kayoo.org/home/
 永野先生は日本の情報教育を創っている中心人物のお一人です。
 もちろん文部科学省「教育の情報化」にかかわる仕事のほとんど全てにかかわっておられます。
 ここに掲載されている「情報教育の目標リスト」が情報教育でねらっていることのほとんど全てを網羅しています。
 実はまだ未完成ではある,と言われていますが…。その辺のことは,追々必要があればまたお伝えします。

 御覧いただいた授業でも,コンピュータ操作とは関係のない部分を実は大切にしている
 ということがお分かりいただけたと思います。
 何かの機会がありましたら,いつでもお越しください。
 客観的な視線からいろいろとご示唆いただければ幸いです。

http://hi-bridge.net/






2003.07.21
高橋教諭の掲示板での書き込み


角田様
 お忙しい中,すばやい御対応に敬服いたします。
 教員ではない方の目に,あの授業はどう映り,どう評価されるのか,大変興味深かったのですが,
 とても的確に分かりやすくまとめてくださり,感謝いたします。
 情報は制作者の意図によって作られるものですから,
 あの授業自体そうそううまくいったことばかりではなかったのに
 そのあたりのことには触れられていませんよね(笑)。
 でも,決して「嘘」ではないので,よろしいのかなと…。
 本当にありがとうございました。

 あの授業はほんの一例ですが,
 授業の中でのコンピュータの使い方って,多様だと思います。
 そのいろいろな使い方に耐えうるコンピュータそしてその部屋であるべきなのに,
 我が校の「パソコン室」は,ただコンピュータを20台置いただけのスペースに過ぎないところが大問題です。
 最大のネックは教室不足。空き教室がないことですね。
 例えば,空調設備が整備された,広い「メディア棟」のような別棟が建築されること,
 これ,理想です。
 絶対実現しそうにないですが(笑)。

 同じ市内の小学校でも,
 前任校の金浦小学校は,もうちょっとマシな「パソコン室」をもっています。
 機器が導入されたのは私の転勤する直前の13年度末だったのですが,
 業者が配置しようとしていたコンピュータのレイアウトにクレームを付け,
 無理をお願いしてその場で変えていただきました。
 金浦小の部屋は本校の2倍程度の面積があるので,単純に比較はできませんが,
 コンピュータ操作だけでなく,座り込んでグループ作業ができるスペースも確保してあります。
 コンピュータも12,13年度をかけて中古のWindows機を12台集めていたので,
 「パソコン室」にいっぱいいっぱい並べて
 さらに余ったものを多目的広場や廊下にも数台置いています。
 残念ながら「LAN」でつながってはいませんが。

 もしよろしければ,御覧になってみてください。
 ただし,今現在どうなっているのか,私には確信は持てません。

> また不適切な表現とか、こう表現したらいい良いとか、ここは誤字脱字ですよとか、ここは間違っておりますよとご指摘戴ければ幸いに存じます。
 言葉の言い回し等の表現については角田様のページなので,お任せします。
 一カ所誤字を指摘するとしたら,
 情報教育の目標を書いてくださっているセル内の「パソコン」という文字が
 「バソコン」になっているように見える,ことぐらいでしょうか。
 細かいことですが。

 ありがとうございました。
 市内の教育行政関係者等の皆様も見てくださると,いいですね。

http://hi-bridge.net