笠岡市議会「維新の会」行政視察

2011.04.20~22






山形県庄内町

「議会活性化の取り組みについて」



山形県庄内町

 庄内町は庄内地方南部の鶴岡市を中心とした田川地区に属するが、北部の酒田市を中心とした飽海地区とも経済的な結びつきが強い。
 平成17年7月1日に、余目町と立川町が合併し、庄内町が誕生した。
 庄内町は、庄内平野の中央部から月山のふもとまで最上川と立谷沢川の流域に広がる、長細い形の町である。
 余目地区は庄内平野の一角を占め、平坦地にあり、国道47号線と県道沿いに住宅や商店、公共施設が集中し、そこを中心に放射状に周辺の集落や市町村に道路が伸びている庄内町の中心地である。
 現在は有数の稲作地帯となっているが、土地の標高が最上川の水位より高いため、最上川から取水できず江戸時代までは広大な原野地帯だった。
 人口は23,484人(平成23年3月末)、面積は249.26k㎡。


庄内町庁舎

議会活性化の取り組み

 山形県庄内町議会は様々な議会活性化に対しての取り組みを行っている。
 視察当日は、議長・副議長・議会運営委員会の正副委員長と議会事務局長の5名に対応して戴いた。
 対応して戴いた議長・副議長・・議会運営委員会の正副委員長のお話から、議会活性化に対しての真剣な取り組みが随所に伝わってきた。
 庄内町議会の平成20年4月1日施行の議会基本条例は、8条と内容は必要最小限に留めており、細部は庄内町議会運営規定に定めている。
 しかしながら議会活性化に関しての取り組みは議会運営委員会で諮り、全員協議会で十分な協議を重ねているという。
 庄内町議会では議事日程・一般質問の内容を各公共機関・金融機関の窓口・町内に115ある全集落に回覧を行って事前PRをしっかり行っている。
 会議録は支所・公民館・図書館に配置しているし、平成20年3月からは本会議のインターネット中継も行っている。
 採決時の評決の氏名公表は平成16年9月旧余目町議会で議会運用例を改正して公表の基準を定めている。
 議会報告会については平成21年度より町内7学区等で開催し、その検証も行っている。
 笠岡市議会も議会基本条例の制定に向けて取り組んでいるが、条例制定後の実際の活性化に向けた取り組みを取り仕切り、協議を重ねる場が十分に機能しなければならないと痛切に感じた。


庄内町議会・委員会室

庄内町議会・委員会室

議会活性化への取り組み

1.町の「基本計画」を議決事件に追加 平成13年3月旧余目町議会定例会で可決
○議会の議決すべき事件を定める条例〔平成17年条例第5号〕
 (趣旨)
第1条 この条例は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第96条第2項の規定により、議会において議決すべき事件を定めるものとする。
 (議会の議決に付すべき事件)
第2条 議会の議決に付すべき事件は、次のとおりとする。
(1) 法第2条第4項の規定に基づく庄内町基本構想に係る基本計画
 

2.議会の議決すべき事件以外の契約の透明性を高めるための条例の制定
  (平成15年3月旧余目町議会定例会で可決)
○議会の議決すべき事件以外の契約の透明性を高めるための条例〔平成17年条例第74号〕
第1条 この条例は地方自治法(昭和22年法律第67号)第98条第1項の規定による議会の検査の充実を図り、議会の議決すべき事件以外の契約の透明性を高めることにより、契約事務の適正な執行に資することを目的とする。
 (議決事件以外の契約)
第2条 町長は、町が締結する次に掲げる契約について、契約の名称、履行の場所、契約の金額、契約の方法、契約の相手方の住所及び氏名、契約締結の年月日並びに契約の期間を次の会議において、これを議会に報告するものとする。
(1) 予定価格1,000万円以上の工事又は製造の請負契約
 (2) 地方公営企業の業務に関する予定価格1,000万円以上の工事又は製造の請負契約
2 町長は、前項第2号に掲げる契約については、地方公営企業の管理者からの報告に基づき、同項の規定による報告を行うものとする。
 (議会の措置)
第3条 議会は前条の規定に基づく報告について、質疑及び意見を述べることができる。
2 町長は、前項の意見が述べられたときには、その権限の範囲内において、当該意見を尊重するよう努めるものとする。
  

3.議員の執行部付属機関からの引き揚げ
  議員が首長の付属機関である各種の審議会や委員会へ参画していた慣行があるが、同僚議員が参画していることから、議案に対する審議に遠慮が働き、議会での修正や訂正がやりにくくなる結果を生んでいる。
  旧余目町議会では、平成9年9月議会からそれぞれの審議会や委員会の任期切れを待って順次行って来たが、情報や資料の入手が困難とならないように常任委員会や議員個々の活動をより活性化させる必要性が生じることから常任委員会の閉会中の所管事務調査の調査強化を行った。

4.委員会等の機能強化
① 閉会中の所管事務調査
  常任委員会の開催回数は、会期中8回、閉会中に22回を目処とし、年間30回を原則として開催する。
② 常任委員会の視察調査
  閉会中の所管事務調査に関わる調査ということで、4年間1期50万円とする。(1年目 10万円、2年目15万円、3年目10万円、4年目15万円を超えない範囲とする。)
③ 常任委員会の調査報告
  単なる調査の結果報告に止まらず、執行部への「提言・提案」とすべきであるし、全議員が同レベルまでの認識に立てるよう本会議での委員長報告に対し質疑も行う。
  旧余目町議会では平成13年3月議会から実施
④ 請願・陳情等の審査
 提出者に委員会審査日を連絡するとともに、審査の一層の充実を図るため、参考人制度を活用するものとする。
⑤ 議会運営委員会、議会広報調査特別委員会の視察調査
 各年度6万円を超えない範囲とする。

5. 一般質問席の設置
 一般質問を行う場合、以前は第1回目の質問で議長席の前に出て、執行部を背にした形で発言していたが、相手の顔が見えないので迫力が無かった。そこで、一般質問席を議員席の真ん中に置き、対面式とした。 旧余目町議会では平成12年12月議会から実施

6.議案審査の強化
  議案審査に当たっては、議会が当局と同じ条件下で審議出来るように必要な「情報及び資料を要求」することを通常より心掛ける。(→常任委員会も含め、より一層議員個々の意識を高めるように努める。)

7. 議会の事務局の強化と参考図書や資料の充実
 人員増や、より一層の機構改革を図り、各種の政策課題についての基本的な資料と常任委員会で必要と判断された図書や資料については、インターネットの利用等で議会として備えられるようにする。
  旧余目町議会では平成13年2月からインターネットが議会独自で活用出来るようになっている。

8.議員研修の充実
  現在の議員研修は、調査視察研修、講演会方式による研修などがほとんどであるが、議員や議会事務局職員の調査・政策立案・法制能力を高める専門実務的な研修の充実や、議員同士ののパネルディスカッションやディベート方式の参加型研修も工夫すべきである。
  旧余目町議会では平成12年度から議会運営委員会で企画する自主研修の実施

9.質問・質疑は議員の義務
  議会の活性化の一番は「議員の質の向上」に関わることから、議員個々の「議案に対して質疑を常に行う」ということと、考え方を質す姿勢が必要最低条件と考えられる。
  質疑を行うことは議員自らが議案に対しての知識と理解を深めるし、また受ける側でも常に答弁出来るよう準備をしなければならない等、双方の意識の向上が町全体の活性化につながるものである。(実施)

10.提言・指摘事項の処理状況の確認
① 議会が採択した請願・陳情等については定期的に報告を求めることとする。
 旧余目町議会では平成15年3月から地方自治法第125条(採択請願の処置)による対応
② 常任委員会で提言を行った事項については常にその執行状況に配慮すべきである。
  旧余目町議会では平成15年3月から定例会毎に所管事務調査と提言した事項の検証のための常任委員会日の設定

11.各種基本計画や各種マスタープランへの対応強化
 各種基本計画やマスタープランなど、策定の段階やその後の進行状況に気を配り調査検討を加えることが必要である。
 旧余目町議会では平成15年3月から常任委員会の所管事務調査のなかで対応

12.一般質問のあり方の改善
① 議員側としては、地元の陳情に終始したり、首長へのお願いやお礼言上の場になったりすることは厳に謹む。(運用例)

13. 一部事務組合や公社等への対応強化
  現在地方公共団体の出資による一部事務組合や公社等、具体的には「庄内町土地開発公社」や「広域行政組合」「庄内開発協議会」等があるが、そこでの予算・決算、事業計画などは一般的に議会には法的に報告の義務のあるものも含め報告書や事業計画等の資料の配布のみの場合が多い。そこで、これらの事業の執行状況の把握については報告のあり方も含め特に気を配るべきである。
 組合議会(酒田地区広域行政組合、庄内広域行政組合)議員は全員協議会で、議会の概要を報告する。
 町の審議会等については、本会議(議案、一般質問)で質す
 土地開発公社については、現在の法律からして対応は困難

14.政務調査費への対応
 当面(議員から必要性との声がでるまで)実施しない。
(平成15年5月29日旧余目町議会全員協議会で確認)

15.議会基本条例の制定
  地方分権の時代を迎え、議会は町民の負託に応え、町民福祉の向上と町政の発展に寄与することが求められている。二元代表制のもと、議会、議員の活動原則及び責務等を定め、議会としての役割を明らかにし、町民に信頼され、より存在感のある議会を築くため本条例を制定した。なお、条例は理念(指針)を中心としたものとし、内容は必要最小限に留め,それを補完する委員会条例等、関係例規により運営を行っている。
(平成20年4月1日から施行)


庄内町議会・本会議場
議員は円形状に一列に並ぶ

庄内町議会・本会議場
インターネット中継のカメラ操作

「住民に開かれた議会」への取組み



1.議会の情報公開
  情報公開条例の中で、議会もその対象として参加する。 旧余目町で平成10年3月施行

2.議事日程予定や一般質問通告書の住民への事前公開
 議事日程予定、一般質問の内容(質問議員、質問の要旨等)等を掲載し、各公共機関、金融機関等の窓口及び町内全集落(115集落)に回覧をお願いし、事前にPRしている。また、町のホームページにも掲載している。 旧余目町議会で平成11年9月定例会から実施

3.住民が身近な場所(公共施設)で議事録閲覧
  住民が手軽に議会を知るための手立てとしては、議事録が一番なので、議事録を町の公共施設に配置し、いつでも手軽にみられるようにする。
(支所、公民館、図書館)

4.議会広報の発行
   ① 名   称  「こんにちは 庄内町議会です」
   ② 編   集  議会広報調査特別委員会(委員6名)
   ③ 創刊号発行  平成17年7月
     (旧余目町議会昭和48年4月より、旧立川町議会昭和54年1月より)
   ④ 発行回数及びページ数
     合併創刊号及び定例会ごと年4回 定例会終了後30日以内の発行
   ⑤ 発行部数及び発行対象   7,450部        
   ⑥ コンクール受賞歴(旧余目町議会)
     町村議会広報全国コンクール入選2位 平成11年度(111号)
     町村議会広報全国コンクール入選    平成 7 年度( 93号)
     町村議会広報全国コンクール奨励賞  平成10年度(105号)、平成13年度(119号)
                              平成16年度(134号)
     県町村議会広報コンクール特選     平成 8 年度(100号)、平成12年度(117号)
     県町村議会広報コンクール優秀賞    平成 7 年度( 93号)
     県町村議会広報コンクール入選     平成16年度(135号)
     (庄内町議会)
     県町村議会広報コンクール入選     平成19年度(  9号)     
     県町村議会広報コンクール入選     平成20年度(  14号)
     県町村議会広報コンクール特選     平成21年度(  19号)
   ⑦ 編集方法等
  ア 定例会終了後、委員会を開催し、記事の内容、写真、ページ数、レイアウト等を検討し発行月日を決定する。 
  イ 一般質問は1議員1問とし、定例会最終日まで質問内容を200字以内にまとめて事務局に提出する。
    (答弁は事務局でまとめる。)
  ウ 各常任委員会の提言事項は随時掲載する。
  エ 予算・決算特別委員会は、質疑、答弁含めて200字以内にまとめて事務局に提出する。(2問以内)
  オ 行政報告並びに議員全員協議会については、概要として掲載する。

5.委員会の公開(原則として本会議同様、公開する。)

6.インターネットを活用した議会中継 旧余目町議会で平成13年3月定例会から実施
 本会議、予算・決算特別委員会の映像情報を、庁舎ロビー、支所、文化創造館、学区公民館、図書館に配信し、各施設のモニターテレビで町民が自由に視聴できる。

7.耳の不自由な傍聴者にやさしい環境の整備
   ワイヤレス受信機の貸出し 平成14年6月旧余目町議会定例会から実施

8.インターネット上への議会ホームページの開設 旧余目町で平成13年4月から実施
   ・定例会のお知らせ ・議会広報(新着)  
   ・会議録検索(H15年度からデータベース化)    旧余目町で平成15年4月導入

9.傍聴者アンケートの実施   旧余目町で平成12年12月定例会から実施
 傍聴の受付の際に「議会傍聴で感じたこと・私も一声」アンケート用紙を渡し、帰りに「アンケート箱に」入れてもらう。

10.傍聴者のために閲覧用の議案等の配置 旧余目町で平成15年月9月定例会から実施

11.傍聴者の要請に応じ要約筆記者の配置  旧余目町で平成15年12月定例会で試行

12.採決時における表決の氏名公表の基準を定めた
   平成16年9月旧余目町議会で議会運用例改正

13.イス式階段昇降機の設置
 車イスの方や足の不自由の方の議会傍聴が容易になった。
 設置に伴い、平成16年月9月旧余目町議会で議会運用例改正

14.議会報告会の開催

  議会活動状況や課題の取り組み状況等について説明責任を果たすと共に、議会活動に対する意見、町政に対する提言等を聴き、町民に開かれた議会及び積極的な町民参加を推進することを目指し、平成21年度より「議会報告会」を町内7学区等で開催している。




秋田県能代市

「教育環境適正化について」



秋田県能代市

 能代市は、秋田県北西部に位置し、東は北秋田市・上小阿仁村、西は日本海、南は三種町、北は八峰町・藤里町に接しており、秋田市には60km~80kmの圏内にある。
 東北地方を縦断する奥羽山脈に源を発する1級河川米代川が市域の中央を東西に流れ日本海に注いでいる。
 下流部には能代平野が広がり、その両側は、広大な台地が広がり大部分が農地として活用されている。
 東南部は、房住山を主体になだらかな丘陵地となっている。西部は、日本海に沿って南北に砂丘が連なり、湖沼が点在している。
 能代工業高校のバスケットボールの活躍が全国的に有名である。
 平成18年に二ツ町と新設合併し、人口は59,985人(平成23年3月末)、 面積は426.740k㎡。


能代市役所第一庁舎

教育環境適正化

 能代市の中心市街地には狭い範囲に3つの小学校がある。かつては3校とも児童数数千人を超える大規模校であったが、近年の少子化や市街地の南進により3校とも児童数が大幅に減少し、3校のうち2校は1学年に2クラス以上ある適正な規模を維持しているが、1校は市街地にありながら1学年に1クラスしかない小規模校となった。そのため、平成19年4月に3校を2校に統合し、学校規模の適正化を図ることとした。


能代市議会議事堂

能代市議会・委員会室

中心市街地の3校統合 (渟城3校統合2校新設)


1.平成13年12月 第4次能代市行政改革大綱に「学校の統廃合の具体的な検討」を盛り込む。

2.平成14年1月~平成16年2月 「21世紀能代市学校教育適正化検討委員会」
 市街地・・・・・・・ドーナッツ化現象・子供の減少・狭い範囲内での立地⇒統合が妥当。
           進学先中学校が2校⇒連携を考慮し、小学校を2校に統合することが妥当。
 市街地周辺・・・市街地からの人口・産業の流出、子供の増加⇒現在は適正規模なので見守っていく。
 郊外・・・・・・・・・学校規模を生かした教育の実施、創立以来の小規模校、デメリットの克服の必要性

3.平成16年6月から11月・「能代市立学校統合協議会・能代市立学区適正化推進協議会」
 必要性・・・・・・渟城第二小のみ小規模、市街地の子供に等しく望ましい教育環境を⇒統合へ
 方法・・・・・・・・3校を2校に、渟城第一小・渟城第二小の一部学区でA小、渟城第三小・渟城第二小・第四小学校の一部でB小。三校とも廃止し、2校を新設する形で。
 学区・・・・・・・・変更される地域について、通学路・地域的なつながりを考慮。他小学校と境界への配慮。
 名称等・・・・・・「渟城」の名前を残して欲しいという意見。校章・校歌等も保護者の理解を。

4.平成17年3月 平成19年4月に渟城3校を廃止し、2校を新設することに決定。

5.平成17年5月~平成19年1月 「渟城3校統合2校新設準備会」
 渟城3校統合2校新設準備会 (各校巡回会場) 8回実施
 関係小学校PTA等の説明会 4小学校4回
 境界地区自治会への説明会 2自治会22回
 通学路・危険個所・運動着・校歌・校章などの小委員会 10回
 閉校記念誌の小委員会・好調との打合会、教務主任との打合会、事務職員との打合会 7回

6.平成18年1月  学校名を教育委員会で決定。

7.平成18年3月 市町村合併

8.平成18年6月 能代市立学校条例を改正

9.平成19年3月 3校廃止
  渟城第一小 (408人・13学級・築37年) 
  渟城第二小 (179人・7学級・築40年) 
  渟城第三小 (312人・12学級・築28年) 

10.平成19年4月 2校新設
  渟城西小 (465人・13学級・築38年) 
  渟城南小 (295人・12学級・築29年) 


歴史を感じる能代市議会・本会議場

歴史を感じる能代市議会・本会議場

 能代市役所第一庁舎と能代市議会議事堂は。国の登録有形文化財(建造物)に指定されている。
 まさにタイムスリップしたような空間である。
 今回視察の対応をして戴いた学校教育課長は校長経験者、参事は教頭経験者で、課長は能代教育研究所長を兼務し、参事は能代市教育研究所長補佐を兼務されている。
 学校教育課長が校長経験者という事で、校長会での発言力が強まり、小中学校の学力向上にも有効であると感じた。
 笠岡市の教育委員会もこうした人事を再考すべきではないだろうか。
 学校統廃合については、いろいろな課題が山積し、長い期間をかけて地域の方々PTA等の理解を求める努力が必要である。
 笠岡市の小中学校の統廃合は離島の問題等で、また違った課題がある。
 常々申し上げている小中一貫教育による統廃合という形が一番望ましいのではと改めて感じた。
 
 



秋田県大潟村

「八郎潟干拓と大潟村の歴史について」



秋田県大潟村

 大潟村は、八郎潟干拓により、湖底から生まれ変わった新しい大地に村がつくられることとなり、村名は全国から募集され、将来に大きな理想と躍進をこめて「大潟村」と命名され、昭和39年10月1日に秋田県で69番目の自治体として誕生し、6世帯わずか14人の人口でのスタートでした。
 全国各地からの入植希望者のなかから選抜された入植者は、干拓の目的である「日本農業のモデルとなるような生産およぴ所得水準の高い農業経営を確立し、豊かで住みよい近代的な農村社会をつくる」ことを担ったパイオニアである。
 平成23年4月1日時点の人口は、3,312人で、面積は中央干拓地と干拓堤防外側の承水路・調整池の水面を含み17,005haである。


大潟村役場


八郎潟干拓

 かつての八郎潟は、東西12km・南北27km・周囲82k㎡・総面積2万2,024haで、琵琶湖につぐ日本第2位の広さを誇る湖で約70種を超える魚介類の宝庫であった。
 昭和29年にオランダのヤンセン教授と フォルカー技師の来日を契機として昭和29年の世界銀行および'昭和30年の国際連合食糧農業機構FAO調査団が調査した結果、干拓事業の有用性が内外に認められた。
 20年におよぶ歳月と総事業費約852億円の巨費を投じた世紀の大事業は、昭和52年3月に完了し、八郎潟の湖底は1万7,203haの新しい大地に生まれ変わった。


大潟村議会・会議室

大潟村・本会議場


八郎潟干拓の目的

1.新しく田を広げて食糧を増産
 八郎潟は広くて浅いことから、古くから農地を拡大する対象として様々な提案があった。
 戦後、再び新田開発が求められた。戦後は食糧が不足し、国民の多くが食べるものが十分にない状態であった。そこで政府は農地を拡大し、食糧を増産する計画を立て、全国各地で開拓や干拓が行われました。八郎潟もその干拓地の一つとして考えられていた。

2.八郎潟の湖岸地域の水害を防止
 八郎潟は最も深いところでも4~5m程度の浅い湖で、日本海とは、船越水道と呼ばれる水路でつながっていた。
 八郎潟には、東側の湖岸からたくさんの川が流れこんでいた。大雨が降ると、川から多くの水が八郎潟に流れてきて、八郎潟の湖岸では水位があがって洪水になってしまうことが多々あった。
 船越水道は曲がりくねっていたため、水がなかなか引かず、一度洪水になってしまうと人々は長い間苦労した。そこで八郎潟干拓工事により、水を管理し、湖岸地域の水害をなくそうと考えた。

3.農家の次男・三男が農業を行う場所を提供
 当時は農家を継ぐのは長男の時代であった。農家の次男・三男は今では考えられないぐらい、就職することが難しい状況であり、特に八郎潟周辺地域は北海道や他の地方へ出かせぎをする人が多い地域であった。そこで八郎潟を干拓し、次男・三男が農業を行う場所とすることを考えた。

4.日本のモデル農村を建設

 当時の日本は、農地の面積がとても小さい農家がほとんどであった。そこで八郎潟干拓地では、大きな農地で大型農業機械を使い、生産性の高い農業を実践することが、将来の日本の農業のモデルになると考えられ。これが大潟村の農地整備の基本になっている。


大潟村・集落地

広大な八郎潟

モデル農村

 大潟村の視察を打診したところ、宿泊は大潟村でお願いしますという事だった。干拓地の中に宿泊施設がある事を初めて知ったわけである。
 能代市を視察した後、八郎潟に到着し、その広大な大地に驚いた。笠岡湾干拓地とは当然比較にならない。その広大な大地をレンタカーで進むと高い建物が目に入った。宿泊するホテルサンルーラ大潟である。 そのホテルには温泉もあり、隣接する建物には村民が利用できる温泉施設がある。
 その温泉施設を利用したのだが、驚くほどの多くの方々が入浴している。
 宿泊したホテルに隣接した集落地にはモダンな住宅・スポーツ施設・教育施設・公民館・道の駅・役場が連なっている。
 まさに計画的な街づくりで、集落地はすべて公共下水道が接続されている。
 視察当日は、村役場で副村長・議会事務局長・産業建設課課長補佐の3名に対応して戴いた。
 副村長の説明では、日本のモデル農村としての誇りを語られていた。
 笠岡湾干拓地の多面的な活用を模索している笠岡だが、農業としてはとても太刀打ちできない中、農業の研究施設等に特化する必要性を感じた。