笠岡市議会「維新の会」行政視察

2011.02.15~17



熊本県天草市

「IT活用の推進について」



熊本県天草市

 天草市は、熊本県の南西部に位置し、周囲を海に囲まれた天草上島と天草下島及び御所浦島などで構成する天草諸島の中心部に位置している。
 この天草市は、本渡市・牛深市・有明町・御所浦町・倉岳町・栖本町・新和町・五和町・天草町・河浦町の2市8町が、平成18年3月27日に合併して誕生した。
 産業は、温暖な気候を活かした農業や、豊かな水産資源を活かした漁業を主として発展してきた。
 また、自然景観、南蛮文化やキリシタンの歴史など、多くの観光資源にも恵まれている。
 県庁所在地の熊本市からは、車で役2時間ほどかかるが、産業の発展や地域間交流など、福岡・長崎・熊本・鹿児島を結ぶ九州西岸地域の拠点となっいる。
 人口は92,917人(平成22年11月1日)。面積は683.17k㎡で熊本県内では最大である。


天草市役所

農林漁業現地事例情報
「農林水産分野におけるI T活用取組事例」


 天草市地域ICT利活用推進協議会・天草市が取組主体として、総務省の地域ICT利活用モデル構築事業として補助事業の採択を受けて平成19年から20年に取り組んだ。
 ITの導入初期経費・6,650万円。ITの年間運営経費・年間1,500万円。


IT導入の必要性・導入に至った経過

 平成18年に天草地域の2市8町が合併した天草市は、広域化に伴う市民サービスの低下の解消と広域行政を支えるハード面の整備として、各公共施設を結ぶ情報通信基盤整備を行った。
 しかし、各分野における課題解決のためには、情報通信基盤整備を有効活用したソフト面(地域コミュニティ活動の温度差・地域間格差是正・観光業や農業・しょうぎょうなどの地域産業活性化、地域の人づくり、生活環境の向上等)らよる総合的な地域活性化を図る必要があった。
 そこで天草市をはじめ、観光協会・農協・商工会・教育関係等の14団体による「天草市地域ICT利活用推進協議会」を平成19年に発足し、この協議会が主体となって「観光ガイドシステム」、「商店街活性化システム」、「田舎暮らし応援システム」、「生産・加工ネットワークシステム」、「保・幼・小・中学校情報共有システム」、「健康天草支援システム」で構成される「Webの駅」を構築することとした。
 「Web」の駅は、行政情報だけでなく個人・団体からの情報の受発信がでくるインターネット上の情報タワーをイメージしており、平成20年3月から運用を開始している。
 

天草市議会・委員会室

天草市議会・委員会室

IT活用により期待される効果・目標

◎売上
 生産・加工ネットワークシステムを活用することで、ネットショッピングによる販売ルートを確立し、システムの目標利用者数を天草市内の農林漁業者や団体、製造業者り半数にあたる約3,000人とし、今後、地場産農林水産物の販売量増加を目指す。
◎元気
 システムへの目標アクセス件数を1年あたり700件とし、今後、新規就農者の増加を目指す。
◎安心
 「Webの駅」でうまく差の農林水産物情報を管理することで、情報の統合化による天草ブランドのイメージ向上が期待される。


天草Webの駅

 「Webの駅」天草情報タワーは、行政情報を配信する行政タワーと個人・団体会員のホームページ、観光ガイド・商店街活性化・田舎暮らし応援システム等から情報を受発信する市民タワーからなるツインタワーのイメージで構築されており、インターネット上での天草の玄関口として、仮想の駅(天草Webの駅)を構築し、そこに訪れる人は、天草のまつりやイベント、観光地、天気、交通、宿泊、グルメ及び行政情報など個々に発信されている情報を総合的に知ることができる。  
  また、「天草Webの駅」の会員になることで個人や団体、企業、ボランティアグループ、サークルや同窓会などが情報を提供、収集、共有することができ、地域活動の活性化や新しいサービスの創出に繋がる道具となる。


「Webの駅」の基本となる構築システム

①イベント情報やニュース等のインフォメーション機能
②会員・顧客情報を管理する会員管理機能
③デジタルマップで観光地等の検索ができるデジタル地図機能
④メッセージのやり取り・スケジュール管理のコミュニケーション機能
⑤レストランやホテル棟の予約機能
⑥一斉配信機能
⑦個人でネット上に出店もできるショッピング機能






大分県臼杵市

「政策討論会について」
「市民との意見交換会について」




大分県臼杵市

 臼杵市は、大分県の東南部に位置し、豊予海峡方面へ楕円状に細長く延びた地形となっている。
 東は豊後水道に面した臼杵湾に臨み、南西部は鎮南山・姫岳など比較的険しい山稜が津久見市、佐伯市と接している。
 河川は、野津川が南西部を東西に流れ、臼杵川・末広川・熊崎川が臼杵湾に注ぎ、これらの河川沿いには水田が、野津地域の北側には畑地が広がっている。
  気象は、瀬戸内海型と南海型が混在し、年間平均気温は15~17度、平均降水量は1,500~1,800ミリメートルで、温暖多雨の自然環境に恵まれている 人口は43,073人 (平成22年11月1日)。面積は、291.06k㎡。


臼杵市役所


議会改革・議会活性化の取り組み

 臼杵市議会においては、市民・市長・市役所と議会が協働する四位一体のまちづくりを目指すとともに、よりわかりやすく開かれた議会を目指し、議会運営委員会をはじめ、定数等検討委員会、政策討論会等を開催して議会改革・活性化に向けた取り組みを進めている。

①ケーブルテレビによる議会放送(録画)・・・・・平成13年6月~

②一般質問の一問一答方式の導入・・・・・平成19年9月~

③議員定数の削減   
 臼杵市議会においては「議員定数等検討委員会」を平成20年1月に設置し、9回にわたり委員会を開催して協議を行った。「減少を続ける市内人口」「厳しさを増す財政問状況」、更には「地方分権に対応した議会の活性化」、この3点に主眼を置き、定数削減の方向で議論を進め、平成20年6月議会において、議員定数を現行の26名から23名の3名減とすることに決定。平成22年4月の選挙より適用。

④予算及び決算常任委員会の設置・・・・・平成20年6月~ 
 臼杵市議会では、議会活性化の取組みの一つとして、常任委員会の見直しを行った。。
 これまでは4つの常任委員会(総務・建設産業・市民福祉・文教厚生)において、それぞれが所管する議案(予算を含む)の審査を行ってきたが、この場合だと、例えば予算の審査をする場合などは、一つの議案をそれぞれの委員会に割り振りして審査をするしかない。
 本来、議案一体の原則により一つの議案を複数に分けて審査することは適切でないとされており、これを改め、更に議論を発展させていくことを目的に「予算常任委員会」を平成20年6月議会より新たに設置した。
 この予算委員会はほぼすべての議員により構成されており、ほとんどの議員が予算審査の全項目に携われるというメリットがある。また、同時に決算委員会も設置し、同様に審査を行える体制を構築している。
 その他の常任委員会は総務・建設産業・教育民生の3つに分かれており、予算・決算以外の議案の審査を行うことになる。
 また、この3委員会については議案の審査だけでなく、所管事務調査の充実等により市の政策・施策に対する検証を行うなど協議内容の充実を図っている。


臼杵市議会・会議室

臼杵市議会・会議室


よりよいまちづくりを目指した、議会機能の強化

①政策討論会の開催・・・・・平成17年6月~
 臼杵市議会では、市の政策の共通理解を深め、市民サービスの向上を図ることを目的に政策討論会を定期的に開催している。
 これは、合併後の新臼杵市の目指す「四位(市民・市長・議会・市役所)一体による響働のまちづくり」の取組みの一環として、市議会が主催で開催しており、本会議とは別に、市のあらゆる政策・施策に対し、情報の共有・問題課題の検証を行う場として市議会議員と市長が自由に討論し、その解決の方策等を検討していく任意の取組みである。
 討論の結果は政策提言としてまとめられ、年度末に市長に対し提言を行っている。
 また、政策討論会では政策・施策の諸課題の把握、政策討論会のテーマ選定に、市が例年実施をしている行政評価の評価結果を活用し、討論内容の充実を目指している。
 将来的には議会が行政評価(施策評価)の外部評価を担えるよう、また、条例提案等を通じ諸問題の解決を図るよう、政策討論会を通じて総合計画や行政評価への理解浸透を図っている。
 この政策討論会を通じ、平成22年3月定例会で、臼杵市議会では初となる議員提案による政策条例「ほんまもんの里みんなでつくる臼杵市食と農業基本条例」が制定された。

②市民との意見交換会の開催  
 臼杵市議会では、政策討論会と連携した発展的な取組みとして、市民と市議会議員との意見交換会を開催している。
 この意見交換会は政策討論会を通じて見出された政策課題をテーマに、それらに関係する市民・団体等に呼びかけを行い、現状の把握や問題の本質を探り、そこから問題解決のための糸口を見つけていくことを目的に実施している。
 平成21年度においては、農業問題をテーマに生産者・消費者・事業者それぞれの立場の代表と、個別に意見交換会を開催し、市内農業における現状や市民意識の把握に努めた。


政策討論会・意見交換会

 臼杵市議会では議会改革・活性化の一環として、『政策討論会』の開催や市民との『意見交換会』等を通じ、政策条例の制定や執行部への政策提言に向けた取組みを進めている。

◎政策討論会の開催、政策提言
1.平成17年度より政策討論会を開催し、市における重要課題について認識、共通理解を深め、市の方針確認や対応策の検討するための体制構築を図った。
2.政策討論会において議論された政策課題に対し、議会側より政策提言を行った。

◎農業政策条例制定に向けて
1.政策討論会において、最も時間を割き、何度も協議を重ねた課題に「農業問題」があったが、臼杵市がどのような農業を目指すのか、臼杵市農業の将来像が明確にされず、それが、大きな課題の一つであると認識ていた。
2.「ほんまもん農業の推進」「堆肥センターの建設」等、市の重要施策が進められる中、現地視察や研修を重ね、議会の役割を再考し、政策討論会で見出された課題、意見等を活かせる議会としての取組みを検討。
3.議会として、臼杵市農業のあるべき姿を明確にし、臼杵市農業が目指す方向性を示すため、農業に関する政策条例の制定を目指した。

◎条例案作成に関する具体的な取組み(H21)
1.政策討論会部会長会議を作業班と定め、制定までに24回の会議を開催。
2.市民との意見交換会を計4回開催、アンケートの実施(農業者・消費者・企業団体)。
3.議会全体での情報共有、意志決定の場として部会会議(議員同士の協議の場)を開催、又必要に応じ全員協議会を開催。
4.条例試案ができた段階で、政策討論会を開催。試案のプレゼンテーションを実施

◎食と農業基本条例制定の目的
1.臼杵市が目指す農業の「あるべき姿」を明確にし、それに向かうための施策の方向性を示し、関係者の責務等を定めることによってあるべき姿の実現を図る。
2.政策手法を明確化した「基本計画」の策定条文を設置することで、執行部側にあるべき姿実現に向けた一体的な取組みの計画的実施を促し、実行性を担保することができる。
3.食の安全・臼杵市農業の振興を図るため、市執行部及び議会が一体となっての意志・取組みを内外にアピールすることで、市民参加の機運醸成を図る。

◎執行部提案と議会提案の違いは≫
 条例制定後の効力は、執行部提案、議員提案ともに同じである。しかし、条例制定の過程に議会が大きくかかわることが重要であり、議会意志や議会にとって必要な条文も付与できるとともに、制定後も議会が責任を持って条例の遂行に参加する風潮が出来上がる。

◎地方議会全般の情勢
 地方分権の潮流とともに、地方公共団体の立法府,意思決定機関である議会の責任・役割は限りなく大きくなってきている。しかしながら、現在の地方議会は、様々な慣習や慣例、制度により硬直化してきていると言われ、議会制民主主義の空洞化・形骸化が懸念される中、それらを改めるための議会改革・活性化への取り組みが全国的に行われている。
 特に近年、議員に求められているのは政策立案能力の向上であり、執行部に対する政策提言や条例の提案・実現である。
 特に立法機能は議会の本質的機能であり、最も重要な中核的機能であるため、本来であれば議員立法(議員提出議案)が中心となりその機能が発揮されるべきとされているが、現実的には国、地方議会にかかわらず議員立法は少なく、行政優位の傾向が非常に強い状況である。この風潮を改め、議会本来の役割を果たすための取組みが、議会改革として全国的に活発化してきている。

◎市議会の役割とは何なのか
1.議会は二元代表制の一翼を担い、執行機関とは独立・対等の関係にある。
2.議会は複数の代表で構成された合議制の機関であることが特徴(市長・執行機関と違う)であり、議会はその審議の場に多様な住民の意見を反映させ、審議の過程において様々な意見を出し合い、課題や論点を明らかにしながら合意形成し、政策を決定していくことが期待されている。
3.議会が積極的に立法機能を発揮すればするほど、執行部に対する統制機能や監視機能が相対的に向上させることにつながる。
4.条例の立案は執行部が行うものだと潜在的に考えられている事が多く、議員は立法府である議会の一員であり、議員自身が自分は条例案を作る権限と職責を有するという意識の醸成が必要である。
5.地方議会は住民の代表機関、意志決定機関としてこれまで以上に住民の意志を反映した活動を積極的に行う必要がある。

◎なぜ議員提案による政策条例の制定なのか
 地方分権一括法以降、議員の条例提案に要する議員数の緩和という事実より、議員の条例立案能力が試されている。
 条例立案(政策立案)が活発であれば、住民福祉の増進に繋げることができるが、そうでなければ地域の活力低下を招きかねない。
 財政も厳しく少子高齢化を迎えるこれからの自治体にとって、地域・都市間の競争に勝ち抜くためにも、議員の政策立案能力の確立と向上は必須である。


臼杵市議会・会議室

臼杵市議会・本会議場