誠信クラブ
行政視察

2009.02.03




北海道白老町

「議会改革・通年議会」



北海道白老町

 白老町は北海道の南西部、胆振支庁管内のほぼ中央に位置している。
 西は登別市、北は千歳市と伊達市の旧大滝村、東は苫小牧市に接しており、町の面積の82%が森林である。
 白老町は穏やかな海洋性気候で、一年を通じて平均気温7.2度と比較的温暖な気候に恵まれていて雪が少ない。
 白老は、アイヌ語の「シラウオイ」から転訛したもので、「虹の多い処」という意味である。
人口は、約20,000人、面積は452.62k㎡。


白老町庁舎

白老町庁舎・玄関

白老町議会

 16名の議員で、総務文教常任委員会名、産業厚生常任委員会8名、広報広聴常任委員会15名、議会運営委員会7名で、議長は委員会に所属していない。
 会派は5つで、2名が無会派である。
 議会事務局は、事務局長・議会グループ主幹・議会グループ書記・議会グループ臨時の4名である。
 白老町では、平成8年2月に民間委員10名による「白老町行財政改革推進委員会」を設置し、具体的な改革素案の策定を諮問し、平成9年4月に69項目の具体的な改革案の答申を受けた。
 この答申において、白老町議会に対して「議会運営全般にわたって見直し」が提起され、議会改革への着手が始まった。


白老町議会・第2会議室

白老町議会・第2会議室

議会改革の検討

 平成9年7月、議会運営委員会に「議会改革等に関する検討小委員会」を設置し、小委員会を16回、町民との意見交換会を2回開催した。
 そして平成10年7月、検討小委員会から議会運営委員会へ、議会改革に対して6項目18件を答申した。
 その後、議会運営委員会において答申項目に基づいて具体的な内容を検討し、平成10年12月定例会において議会改革に関する委員会報告を行った。
 その報告は、議員定数を引き続き慎重審議すること、倫理条例は引き続き審議し平成11年3月制定を目指すという内容であった。

   

議会改革に対しての委員会報告
 (H10.12)

1.議員定数の見直し

2.研修視察
   *道外視察の日程短縮
   *全議員のレポート提出を義務化
   *海外行政視察派遣の凍結

3.議員の政策能力向上
   *政策形成過程での議会の関与
   *各種制度の十分な活用
       (公聴会・参考人制度・議案の提案)
   *一般質問の活性化
   *会派の充実強化 (勉強会・研修)
   *議会図書室とOA機器の整備
   *議会事務局の体制強化

4.町民に親しまれる議会
   *各委員会の地域別開催
   *議員の出前トーク
   *議会議事堂の開放 (模擬議会・子供議会)
   *傍聴者への一般質問通告書の配布
   *ポケットベル・携帯電話持ち込み禁止
   *障害者に配慮したスロープ等の設置
   *夜間議会の実施・・・・当初は傍聴者が多かったが、最近はインターネット中継で減っている。

5.情報公開

6.倫理条例の制定


第1次議会改革 (平成10年度~14年度)

1.議員の政策能力向上
   *政策形成過程での議会の関与
   *各種審議会、委員会の傍聴
       (平成9年4月から申し合わせで各種審議会、委員会の兼職を禁止としているが、
       各議員は各種審議会、委員会を傍聴するなど行政課題を先取りする努力を行うとしている。)
   
2.町民に親しまれる議会づくり
   *各委員会の地域別開催 (移動常任委員会)
   *議員の出前トーク
   *休日・夜間議会の実施  (基本的には年1回・3月定例会に代表質問を夜間議会として開催)

3.議会の情報公開
   *白老町情報公開条例の施行 (平成12年1月1日~)
   *各委員会の公開
   *委員会記録の全文議事録化 (平成12年4月より情報公開制度による公開)
   *本会議議事録のインターネットによる公開 (平成12年度実施)・・・・アクセス数は毎年10%のUP
   *情報公開制度に基づく開示請求 (委員会議事録を平成14年・3件)

4.倫理条例の制定
   *平成11年3月23日条例制定 (4月1日施行)


第2次議会改革
 (平成14年度~18年度)

1.議会の議決権の範囲拡大
   *専決処分と臨時会の在り方

2.議会機能の充実と議員の政策論議の活性化
   *議場にパソコン導入・・・・・予算の関係で未実施
   *代表・一般質問の1回目の答弁書を議員に配布・・・・・平成16年第2回定例会から実施
   *議員研修の充実
   *正副議長は、後援団体の役員就任を慎む

3.町民に開かれた議会づくり
   *本会議のインターネット中継・・・・・平成15年12月から実施
   *議会単独のホームページ開設・・・・・平成15年1月から運用開始
   *請願・陳情提出者に審査日程を連絡し傍聴を促す (委員会)
   *傍聴者に請願・陳情書の写しを配布 (委員会)
   *傍聴者との懇談会開催 (委員会)
   *傍聴規則の見直し・・・・・平成19年9月に議会傍聴規則の改正・委員会傍聴規則の新設
      (傍聴規則の改正により、傍聴者の写真・ビデオ撮影、録音について基本的に自由となる)
   *議会に対する意見等「意見箱」の設置
   *庁舎入口等に当日の議会・委員会日程の案内板の設置
   *「議会だより」の音声版の作成
   *報道関係者の傍聴席でのパソコン使用

4.議員報酬・手当等
   *旅費支給の見直し
   *政務調査費についての検討

5.事務局体制等の充実
   *「係」制を廃止し、「スタッフ」制を導入


白老町自治基本条例の制定 (平成18年度)

 平成17年5月、「町の憲法」である白老町自治基本条例の制定に着手することを決定した。町民・議会・行政のそれぞれが策定部会を組織して、それぞれの役割と責任により条例の骨子素案を作り、町民への中間報告会を経て、最終的に一本の条例とした。
 議会の役割は、議会が自ら策定するものとし、平成17年7月第4回臨時会において、議員全員による特別委員会を設置し、小委員会9回、特別委員会10回の議論により議会関係の条項案を策定し、平成18年12月定例会において、町民・議会・行政の役割等が一体となった自治基本条例が成立した。
 (笠岡市の場合は、議会から2名、他の団体代表者として1名の議員が策定委員会に所属した)
 自治基本条例における協働の原則は、「情報共有の原則」と「住民参加の推進」の二本柱であり、議会の責務として「不断の議会改革」を定め、議会運営のあるべき姿を示している。


議員定数削減 (平成19年度)

 白老町議会は、平成19年10月から議員定数を20名から16名とした。
 議員定数の議論は、第2次改革の項目に掲げ、町民参加により慎重に審議するとしていたことから、町内7箇所において「議会報告会」を開催し、これまで行ってきた議会改革の報告と併せて、町民が抱いている議員定数についての思いを聞いた。
 町民の意見は2分しており、議員を減らせという声と、議会本来の機能であるチェック機能の低下を危惧する声があったが、最終的に議会の意思として、定数を4名減じることとした。
 定数削減するにあたっては、議会活動を十分に担保するため、①議会のチェック機能を確保する仕組み、② 議会の意思と住民の意思が乖離しない仕組み、③ 議員の資質向上を図る仕組み等を検討した。
 その議論の結果、第3次議会改革期に向けて、以下の2つの取り組みを採用した。

1.議会広聴の充実強化
 「広報広聴常任委員会」の設置すること、議会が町民に対する広聴活動に責任を持つ。
 (笠岡市では広報広聴委員会は常任委員会という扱いではない。)

2.「通年議会」制の導入
 「通年議会」による議会の活動能力の確保。
 議会の招集権は首長にあり、年4回定例会を招集し議会を開くことが通例であり、議会が主導的に議会を開く仕組みになっていない。定例会の開催は、平成16年の地方自治法改正により回数制限が撤廃され、自治体が任意に議会のあり方を決めることができるようになった。
 白老町議会は、議会の活動能力がない「閉会中の期間」を無くし、議会が主導的・機動的に活動できる制度によりチェック機能のより充実強化を図るものであり、災害時の緊急対応や突発的な行政課題に対して議会を開く事が可能となった。


第3次議会改革の取り組み

 平成20年定例会6月会議において、議会運営委員会が「町民に開かれた議会」、「町民に親しまれる議会」、「議員の政策能力向上」、「議員の倫理」、「会議の運営」を柱とした以下の6項目・16件の第3次議会改革に取り組むとして委員会報告した。


1.町民に開かれた議会
   *議会情報の公開
   *議会報告会の開催

2.町民に親しまれる議会
   *議会懇談会の実施
   *積極的な広報広聴活動
   *委員会の地域別開催 (移動常任委員会)
   *町民から意見を聞く機会の拡充

3.議員の政策能力の向上
   *議決事件の追加 (自治法第96条第2項)
   *政策研究会の設置
   *政策能力の向上

4.議員の倫理
   *倫理条例の改正
   *議員活動の公表 (出席状況・議案の賛否状況等)

5.会議の運営
   *通年議会の実施 (本会議)
   *自由討議・反問 (本会議)
   *委員会の活発化 (委員会)
   *自由討議の原則 (委員会)

6.議員定数等
   *議員定数と議員報酬について引き続き検討


 今回の視察は、兵庫県議会民主党・県民連合14名との合同視察となった。
 とにかく白老町の通年議会の取り組みは全国的に有名であるが、通年議会に至るまでの様々な議会改革は驚く事ばかりであった。
 こうした議会改革の発端は、酒気帯び運転の議員・長期の病欠の議員等で、町民からの批判が続いたという事と、危機的な財政状況で、職員の給与の思い切った削減、また町民へも様々な負担を強いているという事が根底にあったようだ。
 だからこそ徹底した議会改革を推進する事ができたと思われる。。
 通年議会については、執行部側にメリットはないにしても議会側にはチェック機能強化というメリットがあると言われた。ただ通年議会により委員会開催日が増えて、議員は年間110回から140回も委員会に出席するという。
 笠岡市の議会改革も、そこそこ頑張っていると自負していたが、白老町に比べるとまだまだだと実感した。
 今後、笠岡市も議会改革に対して積極的に取り組まなければならない。
 そして、そうした議会改革が執行部側の前向きな取り組みとなり、市民の目線の市政推進とならなければならない。