誠信クラブ
行政視察

2008.08.20




佐賀県武雄市

「わっかもんプロジェクト」
「農作物のブランド化」
「佐賀のがばいばあちゃん・GABBAの取り組み」
「楼門朝市の取り組み」
「市民病院の民間移譲」




佐賀県武雄市

 佐賀県武雄市は、佐賀県の西部、佐賀市西約28km、佐世保市東約30kmの場所に位置する。
 地形は低山と盆地と川沿いの平地が入り組む地勢である。
 南東部の武雄盆地の西端と、西側の盆地に人口が集中しており、他の地域は山地。
 産業は、旧武雄市内を中心に武雄古唐津焼の窯元が多い。山内町は有田町に隣接しており有田焼の窯元が多く立地していて、陶磁器の生産が盛んである。
 人口は約52,000人、面積は約195.44ku。


武雄市役所

樋渡市長との再会
 
樋渡市長の笠岡での講演会

 今年の2月28日に、佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長の「佐賀のがばい市長講演会」が市民会館で開催されたが、とにかく独創的な取り組みをユーモアを交えて聞かせて戴き、是非武雄市へ実際に伺ってみたいという強い気持ちから今回の視察を計画した。
 そして樋渡市長の忙しい公務を調整して戴き、午前中には市長に直接お会いして、いろいろと本音のお話を伺う事ができた。
 樋渡市長のブログは毎日目を通しているので、聞きたいことばかりであった。
 また午後からは各担当課から説明をうかがうことができた。
 とにかく独創的な様々な取り組みには驚くばかりである。


樋渡市長の独創的な取り組み

 樋渡啓祐(ひわたし けいすけ)市長は、武雄市に昭和44年に生まれ、県立武雄高校・東京大学経済学部を卒業後に総務省に勤務。
 平成15年から平成18年は総務省から大阪府高槻市の市長公室長として出向、関西大学の誘致、全国初の放置自転車のインターネットオークション、市の公式ホームページを全国3位に押し上げた実績がある。
 平成18年4月に武雄市長に就任後、若手職員有志による「わっかもんプロジェクト」の設置、公用車のネットオークションによる公売、副市長制の導入など次々に新しい施策を実施した。
 またフジテレビ制作のテレビドラマ「佐賀のがばいばあちゃん」のメインロケ地の誘致を成功させ、市役所内に「佐賀のがばいばあちゃん課」を設置し、ロケスタッフから「テレビドラマ史上最高の支援体制」と言われるほど、全市を挙げての支援体制をとった。
 また農作物のブランド化としてレモングラス・イノシシをいかした特産品づくり、朝市の取り組み、がばいばあちゃん・ダンシングチームの結成等、数々のユニークな取り組みを続けている。
 現在、市民病院の民間移譲に関して、医師会と全面的な対決を繰り広げているという事で、いろいろな苦労話を伺う事ができた。
 医師会をはじめとする反対派から市長リコール運動を展開されているという事だが、何が何でも市民病院の民間移譲を成し遂げるという強い意志に感動した。
 市長は市民病院の民間移譲は「企業誘致」であるという発言が印象的であった。


市長室は2人の副市長と同室


市長に庁舎内を案内して戴く


武雄市議会・委員会室


武雄市は、ユニークな名前の課がいろいろある

「わっかもんプロジェクト」について・・・企画課

 柔軟な発想や斬新なアイデアを市政に反映させて武雄市を盛り上げようといった、市民主体の活動で計画立案から実行まで行っている。
 (「わっかもん」とは、気持ちが若い人を指し、実際の年齢ではない。)


現在のプロジェクトチーム

1.がばい探検隊
・・・Webで情報発信、目標は「自治体るるぶ」作成
2.よか子育てタイ!
・・・インターネットを通して子育てに関する情報収集・発信
3.子どもと遊ぶっ隊
・・・1000人規模でのキャンプを目標
4.武雄の文化こんなにあるあるっ隊
・・・Wiki による武雄の文化・歴史の掲載
5.しゃーびゃーすっ隊
・・・市役所を中心としてコミュニティーの醸成を図る
6.とぜんなかっ隊
・・・イベント通してまちづくりを行う。当面の目標は大規模な音楽隊
7.武雄映像倶楽部
・・・武雄のCM等を作成、映像でのPRを図る
8.武雄三樹物語
・・・樹齢3000年の大楠3本を中心として世界に情報発信
9.高架下を効果的に利用し隊
・・・現在進行中の鉄道高架下を有効に活用する。


農作物のブランド化・・・レモングラス課

 武雄市では、活力ある豊かな農業を実現するため、中産間地域の遊休農地や耕作放棄地を中心に「収益性の高い、やりがいのある農業の確立」のため、イノシシが忌避し、、食用・薬用・加工用と多様性のあるハーブの一種「レモングラス」に着目して産地化を目指している。

レモングラス産地化戦略

1.イノシシ被害に遭いにくい作物
2.高齢者でも栽培できる軽労働の作物
3.生産効率が高く、高収益が期待できる作物
4.無農薬・無化学肥料で栽培しやすい作物
5.健康ブームによりハーブ料理の需要が見込める
6.農業放棄や耕作放棄地を増やさないための魅力的作物

平成19年度に開発・販売されたレモングラス

1.レモングラス乾燥葉    15g 300円
2.レモングラス入浴剤   120g 240円
3.レモングラスところてん      160円
4.レモングラスこんにゃく      100円
5.レモングラスパン           70円
6.レモングラスゼリー         150円
7.レモングラスプリン         150円
8.レモングラス畳          (試作品)

 現在、高値で取引される東京市場への販売という事で、新宿・伊勢丹のハーブコーナーで販売中。
 今後は、大規模生協・ゆうパック事業でのカタログ販売へ参加、またインターネット販売も充実させる。
 そしてより付加価値の高い商品の開発を進めている。 (エッセンシャルオイルの抽出・レモングラスパウダーの生産)


 レモングラスだけでなく、有害鳥獣であるイノシシを地域資源ととらえ、地域の特産品としてブランド化を図り、高品質・希少価値・高付加価値をつけた製品を、武雄市内の旅館や道の駅などに訪れる都市住民等に販売するとともに郷土料理としても提供しようとブランド化を図っている。


レモングラスの商品

営業部・レモングラス課
円形のテーブルがユニーク

レモングラス畑


GABBAの7人の武雄市PRパンフレット



「佐賀のがばいばあちゃん・GABBAの取り組み

・・・がばいばあちゃん課
 
 全国ネットで放映されるテレビドラマのロケ地を誘致し、制作等に関し市民参加による各種支援を行うことにより、映像や「武雄のもてなし」によって武雄の魅力を全国に伝え、市民の地域に対する誇りを醸成するとともに、武雄の知名度向上と地域の活性化を図るために、市役所内に「佐賀のがばいばあちゃん課」を設け、市内の関係機関・団体を網羅した「武雄市・佐賀のがばいばあちゃん実行委員会」を組織し全市的な受入体制を整えて撮影を行なった。
 そして平成19年1月4日に、フジテレビ新春ドラマ「佐賀のがばいばあちゃん」が放映された。

 その後、平成19年1月下旬、樋渡市長により「武雄の七人のがばいばあちゃん」が誕生、2月下旬に「武雄の七人のがばいばあちゃん」観光ポスターとなって登場、3月下旬には佐賀県知事・佐賀県議会議員選挙の告知テレビCMにメンバーが登場、4月には武雄温泉楼門周辺で行われている「楼門朝市」のポスターに登場した。
 そして5月3日に「武雄の七人のがばいばあちゃん」のメンバーの一人「もんぺみよちゃん」こと緒方美代子さんの石像が完成、武雄温泉物産館にお披露目された。
 5月には樋渡市長が、突如「武雄七人のがばいばあちゃん」を歌手デビューさせる事を決意、6月10日、武雄文化会館で開催された「島田洋七講演会」において、来場者1700名を前に「うれしか楽しか ちゃーがつか」で歌手デビューし、ユニット名を「GABBA」とした。
 その後、テレビ・新聞・雑誌などの取材、様々なイベント・ライブに出演し、平成19年9月12日にCDデビューした。
 最高齢92歳、平均年齢75歳の7人組は、現在も九州地区を中心に活動を続けている。
 最近では、平成20年7月には新潟まで出向いている。
 武雄のPRが高齢者の生きがいとなっている大変ユニークな事業で樋渡市長のプロデュースには、敬服する。


「楼門朝市の取り組み」・・・農林商工課・産業係

 平成19年4月29日より、楼門広場で「楼門朝市」を開催している。
 毎週日曜日、夏季は7時〜9時、冬季は7時30分〜9時30分で、楼門朝市実行委員会を組織して開催している。
 事務局は武雄市農林商工課・楼門朝市係で出店数は増えており最近では約30店舗となっている。
(登録数約60店舗)
 開催当初は樋渡市長先頭に立って朝市を盛り上げ、GABBAもライブを行ったりした。
 実行委員会に必要な費用は、出店者負担金(売り上げ金額の5%)、補助金及びその他の収入をもって充てている。(市費補助はない)
 この朝市も定着し、武雄市の観光の目玉に育ちつつある。

楼門

武雄市民病院


武雄市民病院の医療改革のチラシ

市民病院の民間移譲について・・・企画課・企画係

 武雄市民病院は、平成12年2月国立療養所を引き継いだ135床(一般病床)の病院である。
 平成20年3月、医師数の減により診療体制の縮小を決定し、医師数が12から9人となり、救急告示撤回、午後診療を休止した。
 そして4月30日、市民病院経営検討委員会・幹事会を立ち上げて、新たな病院像について検討を行った。
 一度も黒字がなかった(8年間の赤字は8億3800万円)市民病院を樋渡市長は民間移譲する決断を行ない、5月20日に全員協議会で説明、5月30日に市議会臨時会を開して資産の譲渡等に関する特別措置を可決、6月2日から16日まで民間移譲の公募を行い、2つの法人が応募した。
 その後市民病院移譲先選考委員会を設置し、7月7日に優先交渉権者を「医療法人財団池友会」と答申した。
 そして7月16日、市議会臨時会で移譲先を「医療法人財団池友会」、移譲時期を「平成22年2月1日」として可決した。
 7月28日には基本協定を締結、8月から医師の派遣を行うことを発表し、8月11日から救急医療を再開した。
 そして救急医療再開後、患者数が増え売上げは急増しているという。
 医師会の猛反発を招き、市長リコールの動きが展開されているが、樋渡市長は断固として民間移譲を推進する意向である。
 樋渡市長の行動力と強い意志に心を打たれた。
 全国の公立病院が今後の成り行きを注目している。
 笠岡市民病院も民間移譲も含めて抜本的に考える必要があるのではないだろうか。